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薄化粧|”なにをしてもええで・・・やさしゅうして”人は心で化粧する。生きんがための闘いに・・・

薄化粧
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薄化粧(うすげしょう)は、1985年公開の日本映画。別子銅山(愛媛県新居浜市の山麓部にあった銅山)の社宅で起きた実際の事件に基づいた西村望の同名小説を原作とする日本映画で妻子を殺した上に刑務所を脱走した男の生きんがための逃亡生活を描く。

薄化粧 映画批評・評価・考察


薄化粧(うすげしょう)

脚本:25点
演技・演出:17点
撮影・美術:18点
編集:5点
音響・音楽:4点
合計69点

 なかなか挑戦的な試みがあるものの、全体的に音量が低く、音響・音楽の調整に失敗していると思います。評価されている時系列を前後させる編集については、僕は分かりにくいだけで上手い編集とは思えませんでした。ゴア演出や派手な特撮もないですが、長時間の映画にも関わらず緊張感を保ち続けられる描写が多く、間延びせず見ていられるのはすごいと思います。

 松本伊代の起用理由が・・・演技が下手というわけではないのですが、緒形拳を誘惑する役としては力不足だったように思います。小娘という感じではありますが、色気で男をたぶらかすという雰囲気がまるでないんですよ。ミスキャストと言われても仕方ない感じです。

 主人公に共感は持てませんが、殺人に至る動機は理解できます。自業自得ではありますが、挑発されたことで逆切れして殺害しているのが一貫しています。ただし、息子の殺害については、自分勝手としかいいようがありません。これについては作中でも自責の念を持ち続けている描写があります。
 
五社英雄がこの映画で描きたかったのはこれだなと思える言葉を大村崑が演じる松井元刑事が作中で語っています。

「刑事をしている時は、見えなかった事が、こうして違う職種につくと、あの時は、実はこうだったのではないか?….と云うように、突然気付く事がある。あの坂根という男は、女好きなんや! そりゃあ男は誰かて女好きやけどな。何て言うのかな…..坂根は良い女に出会えんかったんや。次々、女が出来ても、みんな良うないんやな。何か、わてな、あいつが可哀そうになってな。良い女というものに出会う事が出来てたら!又、違った行き道が有っただろうに…」

実際の事件について -ダイナマイト爆殺事件、母子殺害事件-
元鉱夫、西村楠義は昭和二十四年一月愛媛県新居浜市角野町の前住所で妻キヨさん(三八)と長女の文香ちゃん(四つ)を殺し床下に埋めた。その後、長男の明君(一〇)二男の博君(六つ)をつれて坑夫生活をしていたが、博君が足手まといになるので同年二月高知県佐川町中山の谷間で絞殺して捨てた。さらに二十五年には自宅近くの斎藤アサ子さんをダイナマイトで爆殺した。

今作品はU-NEXT で見ました。

薄化粧 あらすじ(ネタバレ)

坂根藤吉は真壁刑事、松井刑事の執拗な追及に遭う。留置所で隠し持っていたカミソリで自殺を図るが奇跡的に一命はとりとめる。妻のふくみ・長男・喬殺しも発覚する。昭和27年、坂根は蛇のように穴を掘って脱獄。以後、素性を隠しながら各地の飯場を転々と渡り歩く。真壁刑事が坂根逮捕に全力をあげる。逃亡生活の果てに、坂根は薄幸の女・内藤ちえと巡り合う。

昭和23年、山奥の鉱業所。鉱夫の坂根は妻と息子の3人で暮らしていた。鉱山で落盤事故が発生し補償問題で鉱夫の代表として会社側と掛け合った坂根は、逆に多額の裏金を会社側から掴まされる。裏金を元に金貸しをはじめた坂根は、事故で夫を亡くした地所テル子に接近、親密な仲になる。逆上した妻ふくみが斧でラジオを壊そうとして逆襲。テル子と同棲を始めるが、息子をお母さんに会わせると連れ出し、惨殺…。

飲み屋のちえは坂根にとって初めて出会った菩薩のような女であった。真壁が訪ね、風呂屋の手配書を見て坂根の素性を知るが、二人は自然に親密な関係になる。ある日、ちえは照れる坂根に無理矢理、眉墨を引いた。最初は嫌がっていた坂根だが、鏡の中に全く別人の自分があり、出歩く時には必ず化粧をすることに。

坂根がなぜ逃げ回っているか?坂根は金を貸しているのをいいことに炭鉱事故で働けない仙波徳一の妻すゑとも肉体関係を結び、すゑの一人娘弘子にまで手を出そうとする。しかし、弘子は坂根からたくみに金を引き出したあげくに、鉱業所の課長と結婚してしまう。小娘に翻弄されたことに気づいた坂根は、弘子の婚礼の夜、ダイナマイトを持ち出し、仙波家を木端微塵に吹き飛ばす。この爆破容疑で追われる。

ちえのことを忘れられない坂根は彼女の元へ。ちえは妾になっていた。つかの間の逢瀬を楽しんだ坂根はまた旅へ出るため駅の便所で化粧をすませ出てくると、向かいのプラットホームには彼のあとを追ってきた薄化粧をすませたちえがいた。二人の逃亡がはじまろうとした時、突然、警察のサーチライトが一斉に点灯する。

「この話は実話である 昭和二十四年 夏・・・事件はここで この場所でおこった」…「終」

薄化粧 スタッフ

監督:五社英雄
助監督:南野梅雄
脚本:古田求
製作:升本喜年,遠藤武志,西岡善信,宮島秀司
プロデューサー:徳田良雄,高橋泰
撮影:森田富士郎
音楽:佐藤勝
美術:西岡善信
編集:市田勇
録音:大谷巖
スチル:小山田幸生
照明:美間博
配給:松竹

薄化粧 キャスト

緒形拳(坂根藤吉役)
浅利香津代(坂根ふくみ役)
川谷拓三(真壁一郎) – 日本アカデミー賞優秀助演男優賞ノミネート
大村崑(松井捨蔵役)
浅野温子(地所テル子役)
宮下順子(仙波すゑ役)
松本伊代(仙波弘子役)
藤真利子(内藤ちえ役)- 毎日映画コンクール女優助演賞 ブルーリボン賞助演女優賞
竹中直人(氏家正肋役)
花澤徳衛(渡辺鉄治役)
柳沢慎吾(明賀英之役)
小林稔侍(森谷役)
菅井きん(とよ役)
萩原流行(立石役)
笑福亭松鶴(上瀧役)

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