白ゆき姫殺人事件は、2014年公開の日本映画。湊かなえ原作。ノンストップで描く、ネット炎上をテーマにした衝撃作! 美人OL殺人事件の容疑者として浮上した【城野美姫】を取り巻き、炎上するネット、過熱するテレビ報道、噂が噂を呼ぶ口コミの恐怖などを描き、累計80万部を突破したベストセラー傑作サスペンスの映画化。
白ゆき姫殺人事件 映画批評・評価・考察
白ゆき姫殺人事件
脚本:33点
演技・演出:16点
撮影・美術:14点
編集:8点
音響・音楽:6点
合計77点
映画用に原作を殺さずうまく脚本化できていることや、監督の演出力も良く、俳優の特性や持ち味を上手く引き出せています。スペシャルドラマ(火サスとか土ワイ)の拡大豪華俳優版といったところで、映画にしてはチープ感がどことなくあり、緊張感が今一つ感じられないところは残念でした。演出で良かったのは、やや過剰とは思ったものの主人公の不運と不遇さや幼少時代のあるある話、ネットならでは風評被害や身勝手なマスコミのいい加減な報道、フェイクニュースに踊らされる世間一般の人々などの様子は同時代性を上手く取り込んで表現できているのはお見事でした。
映画では、原作の架空のSNSを実在するTwitterに変え、ツイッター・ジャパンの協力のもとに、画面上に多数のツイートが表示されるという演出がされています。関連するキャンペーンでは、Twitter限定の特別映像が公開されるなどしています。また、小説ではライターだった赤星は映画ではテレビワイドショーの契約ディレクターとなります。無責任な噂・口コミが真実とされてゆくさまを表現するため、物語の展開や表現手法を映画向きに処理したと評価されています。
白ゆき姫殺人事件 あらすじ(ネタバレ)
長野県のしぐれ谷国立公園内で、化粧品会社のOL・三木典子が滅多刺しにされ燃やされた遺体となって発見される。テレビワイドショー『カベミミッ!』の制作を請け負う契約ディレクターの赤星雄治は、知人の狩野里沙子から三木殺害に関する情報を知らされると、その内容をツイートし始めTwitter上で注目される。赤星は狩野から三木に恨みがあるとされ、事件の日から失踪している同僚・城野美姫の存在を知る。評判の美人だった三木の事件は、いつしか勤務する会社の目玉商品になぞらえて「白ゆき姫殺人事件」とネット上で呼ばれるようになる。
赤星がワイドショーに取り上げるべく周辺に取材すると、地味で目立たない城野は上司の篠山聡史と交際していたが三木に彼を奪われていて、また同期として何かと比較される存在とされていた。赤星は城野を犯人と断定して取材を進め、周辺社員たちの城野への疑いや、篠山が城野からの手作り弁当を受け取るも迷惑がっていたことなどのツイートを続けてゆく。
やがて匿名の何者かが城野の実名や学歴までもネット上で暴露する中、赤星は彼女の故郷で取材する。知人たちは子供の頃城野が放火騒ぎを起こしたことや、呪いの力を持っているという噂を話し、城野の両親も娘を犯人と考えカメラの前で謝罪する。だが、小学校時代の親友で引きこもりの谷村夕子は、『赤毛のアン』の世界に浸っていた二人の少女時代、夕子をいじめる級友を改心させようとしたおまじないで火災を起こしてしまい、以来付き合いを禁じられたことなどを語る。しかし放送された番組の内容は城野を犯人と決め付け魔女のような不気味な女性であると強調するものになる。ついに城野の大学時代を知る友人が番組に抗議文を送り、赤星の行動も上司にばれたためTwitterから遠ざかるが騒ぎは収まらない。
その頃、ビジネスホテルの一室に身を隠し世間の自分への糾弾を茫然と眺める城野は、自分自身について手記にしたためる。少女時代、城野は夕子とともに『赤毛のアン』のように空想にふけっていじめなどの辛さをやり過ごし、何かいいことがあると信じて日々を生きていた。中学生になると初恋相手の少年にアンの恋の相手ギルバートを重ねて空想を楽しむが、その行動はのちに城野が魔女であると誤解される振る舞いと見られる。就職後、三木と出会うが、彼女はそれまでの被害者像とは異なり、他人の服装を真似したり、嫌味な言動をして他の女子社員を傷つける人物だと語られる。そしてある日三木の前で、夕子のことを彼女より美しかったと語ったのをきっかけに城野は三木の攻撃のターゲットにされる。篠山に手作り弁当を渡して喜ばれ、順調に交際するも三木に奪われ、心の支えとしてのめり込んでいった音楽グループ・芹沢ブラザーズのファンであることを知られると、メンバーの雅也との交際をほのめかされるなど、城野は彼女に傷つけられてゆく。そして東京でのコンサートチケットを譲る約束を反故にされた城野に狩野が近づき、会社の飲み会で三木に薬を盛って眠らせ、チケットを奪ってコンサートに行く計画を入れ知恵する。事件当日、城野は打合せ通り眠らせた三木を車に乗せ、コインパーキングに放置し東京へ出かける。だがファンに取り囲まれる雅也に手を触れた直後、彼は階段から転落し、混乱した城野はホテルへ逃げ込む。大ケガをさせた犯人と自分が疑われているのではないかという不安、そしてネット上の糾弾を目にした城野は、罪悪感にさいなまれ自殺を図ろうとする。
だがその直前、ニュースは三木殺害の犯人として狩野が逮捕されたことを報じる。三木と仕事上パートナー関係だった狩野もまた三木の被害者で、また狩野は騒ぎを起こすことを面白がって職場での盗みなどを重ねていた。それを三木に知られたため、城野をそそのかして計画を進め、車で三木をしぐれ谷に運んで犯行に及んだと狩野は証言する。疑いの晴れた城野は祖母の葬儀のため実家に帰るが、家族や周囲の人々とは気まずい。しかしその夜、部屋で城野が見たものは、昔と変わらず彼女の味方であり続けていた夕子が送る、ロウソクの明かりを使ったサインだった。二人は夜の闇の中でサインを送り合う。
ワイドショーは事件の結末を報道するも城野への犯人扱いには簡単にお詫びを述べたのみで、Twitterは一転して城野への同情に溢れ、今度は赤星が糾弾され個人情報を晒される。契約を切られ、城野の故郷へ謝罪に訪れた赤星を、暴走する車が危うく轢きかける。心配して運転席から出てきたのは城野だった。憔悴して自分の惨めな境遇を見知らぬ相手に愚痴ってしまう赤星に、城野は「きっと何かいいことがありますよ」と励ます。彼女が城野だということに気付かないまま、赤星は付き添いの長谷川とその場を後にし、城野の運転する車も田舎道を走り去ってゆく。
白ゆき姫殺人事件 スタッフ
監督:中村義洋
脚本:林民夫
原作:湊かなえ
製作総指揮:大角正
美術:西村貴志
撮影:小林元
編集:川瀬功
照明:堀直之
音楽:安川午朗
劇中曲:芹沢ブラザーズ「All alone in the world」(キングレコード)
録音:松本昇和
配給:松竹
制作プロダクション:松竹撮影所
制作協力:松竹映像センター
製作委員会:『白ゆき姫殺人事件』製作委員会(松竹,松竹ブロードキャスティング,集英社,ジェイアール東日本企画,ぴあ,博報堂,GyaO!)
白ゆき姫殺人事件 キャスト
城野 美姫(日の出化粧品社員・容疑者):井上真央(小学校時代:高橋美来 / 中学校時代:諸江雪乃)
赤星 雄治(映像制作会社「TAG」映像ディレクター):綾野剛
長谷川(映像制作会社「TAG」編集マン):染谷将太
日の出化粧品
狩野 里沙子(典子のパートナー):蓮佛美沙子
三木 典子(殺人被害者):菜々緒
篠山 聡史(係長):金子ノブアキ
満島 栄美(美姫のパートナー):小野恵令奈
間山先輩(劇中途中退職・美姫の元パートナー):宮地真緒
小沢 文晃:草野イニ
課長:芦川誠
役名なし:品田裕介,吉田千紘,知江崎ハルカ,岸田愛未,小林美萌,山田ゆり,竹倉愛,松島志歩,梶野春菜,安田徳,金沢まこと
親族・友人
城野 光三郎(美姫の父):ダンカン
城野 皐月(美姫の母):秋野暢子
城野 ハツエ(美姫の祖母):森康子
谷村 夕子(美姫の幼馴染):貫地谷しほり(小学校時代:井東紗椰)
夕子の母親:ひがし由貴
なでしこ荘・大学時代
前谷 みのり(美姫の友人):谷村美月
さえ(美姫の友人):白石糸
めぐみ(美姫の友人):石志望
あかり(美姫の友人):小坂実夏子
えっちゃん(美姫の友人):境橋香歩
ゆか(美姫の友人):岡本璃奈
小学校時代
八塚 あかね(美姫の同級生):米山実来
鈴木 太一(美姫の同級生):盛永皐月
いじめっ子:大原由暉,新倉滉祐,中村一葵
あかね一派:森田愛子,櫻井小桃,北村海歩,脇本心愛
東山先生(美姫の担任):宮本真希
八塚 絹子(あかねの母):山下容莉枝
中学校時代
江藤 慎吾(美姫の同級生):大東駿介(中学校時代:内山遥城)
中学校の担任:小久保寿人
高校時代
島田 彩(美姫の同級生):野村佑香
尾崎 真知子(美姫の同級生):川面千晶
情報番組「カベミミッ!」
水谷(司会者):生瀬勝久
平塚(女子アナ):朝倉あき
味沢(レポーター):増岡裕子
河合(コメンテーター):木下政治
秋山(コメンテーター):山崎満
VTRナレーター:小室正幸,千葉聡司
山下(番組ディレクター):小松利昌
テレビ局員:飯田基祐
再現Vの城野美姫:隅倉啓美
再現Vの三木典子:春山怜那
業者の男:宮本大誠
中継レポーター:最所美咲
アナウンサー:中村有未,住田洋
芹沢ブラザーズ
雅也:TAIRIKU(TSUKEMEN)
優也:KENTA(TSUKEMEN)
美也:SUGURU(TSUKEMEN)
他
男性刑事:鈴木晋介
女性刑事:雨音めぐみ