山椒大夫(さんしょうだゆう)は、1954年公開の日本映画。森鴎外の原作(大正五年一月“中央公論”発表)を「唐人お吉」の依田義賢、「鯉名の銀平(1954)」の八尋不二が再解釈を加えて脚色、「祇園囃子」の溝口健二が監督にあたった。撮影宮川一夫、音楽早坂文雄と溝口作品のレギュラー・スタッフの他、建築考証に日本古建築専攻の藤原義一、衣裳考証に「西鶴一代女」その他に協力した上野芳生が加わっている。ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を獲得するなど、海外でも高く評価され、溝口の代表作のひとつとなった。
山椒大夫 映画批評・評価・考察
山椒大夫(さんしょうだゆう)

平安時代の末、母とともに旅をしていた幼い安寿と厨子王は、人買いにだまされ、母と離ればなれになってしまう。2人は丹後の大地主・山椒大夫の荘園で過酷な労働に苦しめられ、ついに逃げ出す決意をするが…。民話をもとにした森鷗外の小説を巨匠・溝口健二監督が映画化。名コンビのカメラマン・宮川一夫とともに繊細で美しい光と影のモノクロ映像で描き、ベネチア映画祭銀獅子賞を受賞、世界中の映画作家に影響を与えた傑作。
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山椒大夫 あらすじ(ネタバレ)
平安朝の末期、越後の浜辺を子供連れの旅人が通りかかった。七年前、農民の窮乏を救うため鎮守府将軍に楯をつき、筑紫へ左遷された平正氏の妻玉木、その子厨子王と安寿の幼い兄妹、女中姥竹の四人である。その頃越後に横行していた人買は、言葉巧みに子供二人を母や姥竹と別の舟に乗せて引離した。姥竹は身を投げて死に母は佐渡へ売られ、子供二人は丹後の大尽山椒大夫のもとに奴隷として売られた。兄は柴刈、妹は汐汲みと苛酷な労働と残酷な私刑に苦しみながら十年の日が流れた。大夫の息子太郎は父の所業を悲んで姿を消した。佐渡から売られて来た小萩の口すさんだ歌に厨子王と安寿の名が呼ばれているのを耳にして、兄妹は母の消息を知った。安寿は厨子王に逃亡を勧め、自分は迫手を食止めるため後に残った。首尾よく兄を逃がした上で安寿は池に身を投げた。厨子王は中山国分寺にかくれ、寺僧の好意で追手の目をくらましたが、この寺僧こそは十年前姿を消した太郎であった。かくして都へ出た厨子王は関白師実の館へ直訴し、一度は捕われて投獄されたが、取調べの結果、彼が正氏の嫡子である事が分った。然し正氏はすでに配所で故人になっていた。師実は厨子王を丹後の国守に任じた。彼は着任すると、直ちに人身売買を禁じ、右大臣の私領たる大夫の財産を没収した。そして師実に辞表を提出して佐渡へ渡り、「厨子王恋しや」の歌を頼りに、落ちぶれた母親と涙の対面をした。
山椒大夫 スタッフ
監督:溝口健二
脚本:八尋不二,依田義賢
原作:森鴎外
製作:永田雅一
音楽:早坂文雄
撮影:宮川一夫
編集:宮田味津三
配給:大映
山椒大夫 キャスト
玉木:田中絹代
厨子王:花柳喜章
安寿:香川京子
山椒大夫:進藤英太郎(東映)
仁王:菅井一郎(第一協団)
吉次:見明凡太郎
小萩:小園蓉子(松竹)
姥竹:浪花千栄子
巫女:毛利菊江
藤原師実:三津田健(文学座)
平正氏:清水将夫(民芸)
曇猛律師:香川良介
太郎:河野秋武
内蔵介工藤:小柴幹治
左太夫:荒木忍
少年時代の厨子王:加藤雅彦 (後の津川雅彦)
少女時代の安寿:榎並啓子
遊女中君:大美輝子
波路:橘公子
汐乃:金剛麗子
平正末:南部彰三
遊女宿の親方:東良之助
判官代則村:大邦一公
金平:伊達三郎
奴:石原須磨男
木戸の番人:天野一郎
萱野:相馬幸子
船着場の女:小松みどり
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