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鬼龍院花子の生涯|夏目雅子の凄味のきいたセリフ「なめたらいかんぜよ!」が当時の流行語となり、夏目のヌードも話題となった。

鬼龍院花子の生涯
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鬼龍院花子の生涯(きりゅういんはなこのしょうがい)は、1982年公開の日本映画。宮尾登美子最初の映像化作品。配給収入は11億円。大正、昭和の高知を舞台に、侠客鬼龍院政五郎(通称・鬼政)とその娘花子の波乱万丈の生涯を、12歳で鬼政のもとへ養女に出され、約50年にわたりその興亡を見守った松恵の目線から描いた作品。松恵(夏目雅子)の凄味のきいたセリフ「なめたらいかんぜよ!」が当時の流行語となり、夏目のヌードも話題となった。夏目は第25回(1982年度)ブルーリボン賞で主演女優賞を獲得。映画の大ヒットで宮尾登美子も流行作家にのし上がった。

鬼龍院花子の生涯 映画批評・評価・考察


鬼龍院花子の生涯(きりゅういんはなこのしょうがい)

脚本:36点
演技・演出:20点
撮影・美術:17点
編集:7点
音響・音楽:7点
合計87点

 今の倫理観では到底許されない、もちろん法律的にも許されない行為が平然と行われいた時代を描くにあたって、俳優の演技力が説得力を生んでいるように見えました。仲代達矢の目の演技、鬼畜の所業もあのキラキラした輝きの瞳で魅せられてしまいます。善悪を超越している人(侠客)を演じるのって到底できるものではありませんが、仲代達矢はできています。夏目雅子が最大限に評価されている映画ですが、子役の仙道敦子の輝きは普通の子役を超えているものです。ただ演技が上手いとかそういうレベルじゃないです。子役に佳那晃子と殴り合いを演じさせるなんて五社英雄も狂ってます。
 今作品の広報では夏目雅子が脱がされたシーンが強調されますが、目を覆いたくなる鬼畜を仲代達矢が演じていて本気過ぎて恐ろしいんです。そういう狂気にさらされながらも芯の通った素晴らしい女性に成長していく品の良さと可憐さがありながら、次第に腹が座り凄みが増していくのを表現できるのもすごいんですよ。もちろん凄みのあるセリフもあるんですが、オーラですよ、画面上から伝わってくる強さ、荒ぶるオーラが漂っています。

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鬼龍院花子の生涯 あらすじ(ネタバレ)

昭和15年夏、松恵は京都の橋本遊郭に駆けつける。そこでは娼妓に身を落とした義理の妹・花子が急死していた。

大正7年秋、土佐の侠客、鬼龍院政五郎と妻の歌は子沢山の白井家を訪れ、ひらくと姉の松恵をもらうがひらくは脱走。松恵は歌、妾の牡丹、笑若と暮らすことになった。

鬼政は闘犬のいさかいで末長平蔵の家に行き、女中のつるをさらって帰る。末長は逃走するが兄弟分の三日月次郎と鬼政が海辺で決闘し、御前こと須田宇市が仲裁する。妾にされたつるは最初鬼政に近付かなかったが、ある夜寝床に居座り、牡丹や松恵と争う。松恵はつると平手打ちをさせられるうち、初潮を迎える。やがてつるは妊娠し花子を出産。鬼政は初めての実子である花子を溺愛する。松恵は県立第一女学校に合格し、鬼政に進学を懇願する。

松恵は女学校卒業後小学校教師となる。花子は世間知らずで我が儘な娘に育った。鬼政は須田から須田が筆頭株主の土佐電鉄のスト破りを依頼される。活動家の田辺恭介と殴りあった鬼政は弱きを助ける侠客として労働運動支援を決意。須田は鬼政を出入禁止とする手紙を送る。鬼政は単身須田のもとに申し開きに行くが、須田は末長と手を結んでいた。

鬼政は16歳の花子を服役中の田辺と結婚させることにする。釈放された田辺は鬼政から欲しいものを問われ、差し入れに来た松恵を所望し、鬼政を激怒させる。鬼政はけじめとして田辺の小指を詰める。鬼政は料理屋に松恵を呼び出し手篭めにしようとするが抵抗されあきらめる。

鬼政は娘の花子を山根組の権藤哲男と縁組する。祝宴の最中、歌が腸チフスで倒れる。鬼政は隔離病院を拒み、松恵が感染しながらも看病するが、歌は死去する。

昭和12年冬。高知を出た松恵は大阪で田辺と暮らし妊娠する。花子の婚約者の権藤が抗争事件で死去。つるは家出。松恵は田辺と高知に帰る途中、船の中で流産する。松恵は鬼龍院家に立ち寄り、鬼政と和解。その夜、一人で夜店を歩いていた花子が末長にさらわれ、後をつけていた田辺が刺殺される。鬼龍院一家は末長のもとに向かうがダイナマイトで一網打尽にされる。徳島の田辺の葬式で分骨を望んだ松恵は田辺の父親に罵倒されるが、松恵は「鬼政の娘じゃき舐めたらいかんぜよ」と啖呵を切る。

子分を亡くし荒れた鬼龍院家。鬼政は供養のため地蔵を彫った。鬼政は末長家に切り込み、花子を連れ戻そうとするが、花子は末長の若い衆を庇い拒否する。その後自首した鬼政は、2年後に網走で死去した。

花子は長らく消息不明だったが一度だけ助けを求めるハガキが届いた。松恵は橋本遊郭を出ると花子のハガキを川に破り捨て静かに立ち去る。

鬼龍院花子の生涯 スタッフ

監督:五社英雄
脚本:高田宏治
原作:宮尾登美子
製作:奈村協遠藤武志
製作総指揮:佐藤正之日下部五朗
音楽:菅野光亮
撮影:森田富士郎
編集:市田勇
製作会社:東映俳優座映画放送
配給:東映

鬼龍院花子の生涯 キャスト

鬼龍院政五郎仲代達矢
鬼龍院家の親分。土佐では名の知れた人物で「九反田の鬼政(おにまさ)」のあだ名で周りから恐れられる。本人はヤクザではなく侠客だと言っている。強面で凄みがある一方、男気があり義理堅い性格。女性が教育を受けることには否定的な考えの持ち主。後に気骨のある恭介に感銘を受けて傾倒し、労働者側の味方となり「土佐労働者同盟」を結成する。

松恵夏目雅子
政五郎の養女。学業に優秀で県立の高等女学校に入学し、後に小学校教師となる。鬼龍院家の人間たちの生き様を目の当たりにしてきた影響で、しとやかな中にも激しい情念を秘める女性に成長。様々な人間との出会いや別れを通じて、波乱に満ちた人生を送る。

少女時代の松恵仙道敦子
当初弟・拓(ひらく)だけが養子になる予定だったが、政五郎に「賢そうな顔をしている」と気に入られたため急遽、鬼龍院家にもらわれる。学校に通わせてもらい勉強に勤しむ傍ら、政五郎の身の回りの世話や後に生まれる花子の子守などをして暮らす。鬼龍院家の人間模様を肌で感じながら思春期を過ごす。

鬼龍院家の家族など
岩下志麻
政五郎の妻。鬼龍院家で働く女中や手下たちに睨みをきかせる。少々のことにも動じずに凛とした佇まいの女性。まだまだ幼い松恵にも鬼龍院家の名に恥じないように容赦せず厳しくしつける。酒好きだが、体に影響が出ており手下たちから心配されている。自身に子供ができないことに負い目を感じているのか、政五郎の妾たちを家に同居させることを公認している。
花子高杉かほり
政五郎とつるの実子。松恵が養女になった1年後に生まれる。小さい頃から政五郎には甘やかされて育ったため、16歳になるとおてんばな娘に育つ。マイペースで自己中心的な性格。幼少の頃から綺麗に着飾る服や化粧品に興味を持つが、その反面勉強は苦手。成長後は色鮮やかな着物と大きいリボンを身に着けている。鬼龍院家を取り巻く人間たちに人生を翻弄される。
つる佳那晃子
元々は末長の所で働いていた女中。政五郎と会った時に強引に連れて行かれそのまま妾となる。当初は鬼龍院家の者たちに反発して完全黙秘を決め込む。しかし政五郎と関係を持ち子供を産むと大きな顔をするようになる。
牡丹中村晃子
政五郎の妾。松恵を実の妹のようにかわいがっている。松恵に厳しく接する歌に「母親らしい所なんて見せたことないのに親を気取って」と心の中で反発心を抱いている。
笑若(えみわか)新藤恵美
政五郎の妾。牡丹ともども歌のことを「お姉さん」と呼んでいる。

政五郎の手下
相良(さがら)室田日出男
政五郎の手下たちのまとめ役。政五郎と共に養子をもらう時に同行した。頼りがいがあり面倒見が良く手下たちをまとめる。松恵にも優しく接しており、松恵からは「おんちゃん(おじちゃん)」と呼ばれ慕われている。
兼松夏八木勲
元々は『かいじん』と名付けた土佐闘犬を愛情を持って育て、闘犬競技に情熱を注ぐ男。対戦相手の平蔵の犬に勝ったことに言いがかりをつけられて犬をなぶり殺しにされる。この時に政五郎が味方になってくれたことから後に鬼龍院家の一員となり、命がけで政五郎を支える。
六蔵佐藤金造(桜金造)
兼松の手下。兼松を心から慕い、後に共に鬼龍院家の一員となる。成長した花子の通学時の護衛や自転車に乗る練習に付き添ったりしている。作中では民謡が上手く、地元の民謡らしき歌を歌っている。
丁次アゴ勇
鬼龍院家の手下。
益岡徹
鬼龍院家の手下。
冬喜(ふゆき)松野健一
鬼龍院家の手下
古今亭朝次
鬼龍院家の手下
太市広瀬義宣
鬼龍院家の手下
恭介の関係者
田辺恭介山本圭
高知商業の学校の教師。貧しい人たちの味方となり、土佐電鉄労働組合の参謀役としてストライキを支援する。真面目で正義感に溢れ、かなり度胸が据わった人物。常に強い信念に基づいて行動している。政五郎とは考えの違いから敵対していたが、打たれ強さと根性を政五郎に認められる。後に松恵に好意を寄せる。
近藤役所広司
土佐電鉄労働組合の委員長。土佐電鉄のストライキを実行する代表者。最初は威勢よかったが、政五郎に一、二発殴られて伸びてしまう。
田辺源一郎小沢栄太郎
恭介の父。家を訪れた松恵に対し、侠客の娘であることを知って不快感を示し「はよ、いね!(早く帰れの意味)」と罵倒を浴びせる。

山根の関係者
山根勝梅宮辰夫
山根組の組長。作中では関西で勢いのあるとされる組の親分。哲男と花子の縁談により鬼龍院家と兄弟分になることを大いに喜ぶ。
権藤哲男誠直也
山根組の若い衆。花子との結婚を前提に付き合い始める。
辻原徳平成田三樹夫
政五郎と山根勝を引き合わせた人物。鬼龍院家と山根組が手を組むには持って来いの哲男と花子の縁談を持ってきたことを誇りに思う。

平蔵の関係者
末長平蔵内田良平
末長組の組長。周りには卑怯な性格として知られているとのこと。『土佐嵐』と名付けた自慢の土佐闘犬(格付けは横綱)を飼っているが、闘犬競技で格下の兼松の犬に負けたことに言いがかりをつける。非常に執念深い人物で、この一件で間に入った政五郎に対し恨みの感情を持つ。
秋尾夏木マリ
平蔵の妻。喧嘩っ早く気性が荒く、気に入らないことがあると公衆の面前でも声を荒らげる。一方でいざとなるとすっとぼけたり、色目を使って事を収めようとする性格。
三日月次郎綿引洪(綿引勝彦)
平蔵の兄弟分。平蔵が政五郎の手下たちによって揉め事が起きたため政五郎の命を狙う。


その他の主な人物
須田宇市丹波哲郎
政五郎から御前(ごぜん)と呼ばれ畏敬の念を抱かれる存在。平蔵と政五郎を若い頃から目をかけており両者にとって逆らえない人物。調子づいてはいけないと政五郎を諭す。牡丹のことをよく知る人物。土佐電鉄の筆頭株主。
梅田貫吉内田稔
須田の知り合い。須田が土佐電鉄のストライキに困っており、問題を解決するよう政五郎に依頼する。世間体があるため、相手にケガを負わせないようにと注文をつける。
白井善七谷村昌彦
松恵の実の父。土佐で細々と商売をしている。店を繁盛させるために後ろ盾が必要と感じ、政五郎が跡継ぎを探していると知って自身の子供を養子に出す。子沢山で10人ほどの子供を抱える。
ひらく桜井稔
松恵の実の弟。当初、政五郎夫妻の跡取りになるべく養子になるはずだった男の子。侠客の政五郎に出会った時から恐れて養子になることを拒み、松恵に連れられ渋々鬼龍院家に訪れる。しかし、鬼龍院家の人間に挨拶を済ませたその日の夜に耐え切れずに一人で逃げ出して実家に戻る。
加藤医師浜田寅彦
歌のかかりつけ医。時々体調を崩していた歌を診察していたが腸チフスと診断する。治療のために隔離病院へ移すことを政五郎に進言する。
島田刑事宮城幸生
「共産党の差金で労働者を扇動している」と治安維持法違反の疑いで、自作の本を街頭で売っていた恭介を連行して取り調べする。

その他
龍松一家の刺客福本清三
辰吉淡九郎
太刀山大川ひろし
天神文吉宮川珠季
秋本要造林彰太郎
ちょろ松勝野賢三
山村建彦岩下浩
駒田重蔵岩尾正隆
きわ富永佳代子
きよ清水郁子
宮崎: 笹木俊志

鬼龍院花子の生涯 予告編・無料動画


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