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孤狼の血|抗え、生き残れ。全面戦争勃発。この国には牙のない男が増えすぎた。魂に焼きつく暴力とカタルシス。躰が痺れる、恍惚と狂熱の126分。

孤狼の血
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孤狼の血(ころうのち)は、2018年公開の日本映画。第69回日本推理作家協会賞を受賞した柚月裕子の警察小説を「彼女がその名を知らない鳥たち」の白石和彌が映画化。暴力団対策法成立直前の昭和63年。広島の呉原で暴力団関連企業の社員が失踪。ベテラン刑事・大上と新人の日岡は事件解決に奔走するが……。出演者には、「三度目の殺人」の役所広司、「不能犯」の松坂桃李、「天空の蜂」の江口洋介、「海よりもまだ深く」の真木よう子ら豪華キャストが顔を揃えている。

孤狼の血 映画批評・評価・考察


孤狼の血(ころうのち)

脚本:36点
演技・演出:18点
撮影・美術:16点
編集:8点
音響・音楽:7点
合計85点

白石和彌監督による骨太の日本映画なのですが、若手とベテランの起用方法がとても良くドラマチックな娯楽性もありながら、陰鬱な闇も描くスタイルに、白石監督の演出の上手さを感じます。ここ数十年の日本映画の監督では一番好きかもしれない。俳優に体を張らせる演出が多くありますが、その俳優の魅力を存分に発揮させているので、やはり上手いなと思える監督です。仁義なき戦いなど深作欣二の映画が好きなんだろうと思える”感覚”はあるのですが、深作作品とは違った魅力があるんですよね。そのあたりは新しい世代の感覚なんだろうと思えます。


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孤狼の血 あらすじ(ネタバレ)

昭和49年に広島県で勃発した、呉原市の暴力団尾谷組と広島市に拠点を置く五十子会による第三次広島戦争は、五十子会幹部の死と尾谷組組長の逮捕という痛み分けに終わった。血みどろの抗争が勝者無き結末を迎えてから14年が経ち、ヤクザ組織が群雄割拠する昭和は終わろうとしていたが、呉原市では尾谷組の残党に対し、五十子会の下部組織の加古村組が抗争を仕掛け、新たな火種が燻り始めていた。 昭和63年(1988年)8月、呉原東署のマル暴刑事大上のもとに、県警本部から新米刑事の日岡が部下として配属された。大上と日岡は、加古村組のフロント企業の呉原金融に勤める上早稲という男が行方不明になっていると相談を受け、捜査を開始する。 捜査を初めて早々に加古村組組員・苗代と接触した日岡は、大上から「因縁つけてこい」と命令されて苗代に喧嘩を売り、半殺しにされる。割って入った大上が懲役をチラつかせながら上早稲の居所を尋ねるが、苗代は頑なに口を割ろうとしない。その態度から上早稲は既に殺害されていると推測する。後日大上は広島仁正会系列の街宣右翼・瀧井からの情報により、上早稲が苗代ら加古村組に拉致される瞬間を捉えたビデオテープを入手する。 日岡は、窃盗、侵入、放火などの犯罪行為をもって捜査を行い、その上尾谷組から賄賂まで受け取るというヤクザ顔負けの手段を取る大上に反発するが、不本意ながらも大上の違法捜査に手を貸していることに葛藤を覚える。

警察官としての正義と大上流の正義の間で複雑な感情を抱く日岡は、苗代から暴行を受けた傷を手当てしてくれた薬局の桃子と親しくなる。

そんなある日、尾谷組のシマであるクラブ梨子に挑発に来ていた加古村組の吉田が梨子のママにセクハラをしたことが許せなかった柳田タカシは、短刀を持って吉田を襲うが逆に返り討ちにされ、吉田に拳銃で撃たれ死亡する。 激怒した尾谷組の若頭一ノ瀬は加古村への報復を始めるが、大上はヤクザ同士の間に入り、落としどころをみつけ均衡を保とうと奔走する。しかし、事情を知らない日岡は報復に乗り出した尾谷組の若い衆を逮捕してしまう。一ノ瀬は全面戦争を決意するも、大上は3日の猶予を申し出、呉原金融の上早稲の首(遺体)を見つけ、加古村組を挙げることを誓う。

大上の違法捜査の証拠と尾谷組との関係を記録した日岡は、上層部に大上の不正を訴える。日岡は県警本部から大上の内偵のために配属されたスパイであり、上司の監察官嵯峨に大上の早期逮捕を訴える。しかし嵯峨は内偵を続行するよう命じ、ヤクザとの関係を綴った「大上の日記」を見つけるように言う。 日岡は大上と行動を共にするうちに、14年前の抗争で五十子会幹部の金村が殺害された事と、その死に大上が関与している疑惑を持つ。

大上は梨子ママと共に加古村組の吉田をラブホテルに誘い出して拘束し、睾丸から真珠を抉り取る凄惨な拷問を行う。吉田は上早稲を脅迫して呉原金融の売り上げを横領させていたこと、更に金を要求された上早稲が五十子会が経営する「ホワイト信金」の金庫から金を盗み出したために加古村組から制裁を受けた事を白状する。シッポを掴んだ大上は、加古村の息がかかる養豚場に向かい、そこで働く善田大輝を薬物所持の疑いで引っ張る。これは捜査じゃないと止める日岡を取調室から追い出し、大上は大輝を拷問して上早稲の首がとある島に埋められたことを突き止める。さっそく捜索隊が組織され、島に埋められた上早稲の首と胴が発見され、苗代ら加古村組組員は全国に指名手配される。事件解決も目前と思われた矢先に、大上は安芸新聞社の記者高坂のタレコミで、吉田に対する拷問などが署長の毛利に知れたため謹慎処分となる。

猶予の3日は過ぎ、日岡は何とか抗争を止めようと奔走するが、ヤクザ相手に人脈の無い日岡は相手にされず、尾谷組は五十子会の幹部を銃撃し抗争が勃発してしまう。 ある夜、日岡が家に戻ると、侵入した大上がハイライトを吸いながら酒を飲んでいた。日岡は慌てて大上の不正を記録したカセットテープと日誌を片付けた。安芸新聞の高坂が署長にタレこんだ内容の中には、その場にいた者しか知らないはずの吉田への拷問の詳細までもが含まれていたという。

謹慎の最中も大上と日岡は抗争を止めようと説得するも、五十子会は手打ちの条件として尾谷の引退と一ノ瀬の破門を突きつけ、当然聞き入れない一ノ瀬からは相手にされなかった。 クラブ梨子で日岡はヤクザに深入りしすぎだと大上に忠告する。広島の2大ヤクザの抗争に巻き込まれ、大上に翻弄される日岡は、薬局の桃子の家へ行き桃子に慰めてもらう。その日を境に大上は行方不明となる。

愛媛県内に潜伏していた苗代らが呉原東署に逮捕された時を同じくして加古村組長以下幹部が殺人罪などで大量検挙され、毛利署長は上早稲殺害事件の解決を宣言するも、大上は4日間行方知れずであった。 五十子会に拉致されたと考える日岡は捜索を申し出るが、嵯峨は「大上の日記」を手に入れろと掛け合わない。豪を煮やした日岡は嵯峨を追求する。日岡が報告した内容を漏洩したのは嵯峨であった。

日岡は瀧井と面会し、協力を仰ぐ。ヤクザに深入りしすぎたと言う日岡に対し、大上を良く知る瀧井は、大上にとってヤクザは駒でしかなく、カタギを守ることしか頭にないと告げられる。また日岡は梨子ママに14年前の金村殺しは大上の仕業ではないかと話すが、ママは金村を殺したのは自分であり、大上が庇ってくれたことを告白し、上層部が欲しがっていた「大上の日記」を日岡に渡す。「大上の日記」には県警上層部の不祥事が詳細に記されており、大上はメモを盾に警察上層部さえも抑えていたことが分かる。さらに日岡が初めから監察官であることまで記されていた。

翌日、港で大上の水死体が上がった。遺体には明らかな暴行の痕と十数か所の刺し傷があったにもかかわらず、呉原東署は記者会見で睡眠薬を飲んだ上に酒に酔って海に落ちたと報じる。大上の胃に大量の豚の糞が入っていたことを聞いた日岡は、養豚場へ行き大輝を問い詰め、必死に証拠を探し、豚の糞の中から大上が使っていた「狼のジッポー」を見つけだす。日岡と別れた直後、五十子の説得に向かった大上は逆に拉致されリンチに遭い、拷問を受けたことを根に持つ大輝に豚の糞を食わせられ、ドスで刺され殺害されたのだ。大上を殺害する様子を話しながら半笑いする大輝に日岡は激怒し、口に豚の糞を押し込み、激しく殴り付け半殺しにする。

自宅に戻った日岡は、大上の不正を記録したカセットテープと日誌を破棄しようとする。しかし日誌は大上の手によりヤクザを挙げるために不都合な記録は黒塗りで塗りつぶされ、さらに「こういうとこがダメなんじゃ」「われの目は節穴か」と大上の注釈がビッシリと書かれていた。大上は日岡が監察官であると知りながらも、マル暴の刑事として育てていた。自分の死を悟った大上は、梨子ママに日岡に託すよう日記を預けていた。ダメ出しばかりの注釈の中、最後のページにはこう書かれていた。

「ようやったのう、ほめちゃるわ」

大上なりの教えと思いを知った日岡は、大上が遺したジッポーとタバコを握りしめて号泣する。

日岡は瀧井と、広島の政財界の大物が集まる会合「やっちゃれ会」に出席する五十子を一ノ瀬に殺害させる計画を立てる。 「やっちゃれ会」には五十子、瀧井夫妻のほか、県警本部長も参加しており、その中には嵯峨の姿もあった。五十子がトイレに立つのを確認した日岡は裏に回り、隠れていた尾谷組の一ノ瀬ら一派を引き入れる。トイレで一ノ瀬は五十子を追い詰め、日本刀で首を切断し小便器に突っ込む。一方、瀧井はカチコミに驚く嵯峨ら県警幹部を裏口から逃がす。待機していた呉原東署員がなだれ込み、尾谷組の若い衆の藤岡が一ノ瀬の身代わりとなって殺人を自白するが、日岡は一ノ瀬に手錠をかける。かくして五十子は死亡、一ノ瀬は逮捕となり、日岡は尾谷組を利用し裏切るという手段を使いながらも一連の抗争は幕を閉じる。

後日、大上の葬儀の場で日岡は嵯峨に「大上の日記」を渡す。上機嫌の嵯峨は、内容がヤクザとの癒着ではなく県警幹部の不祥事である事に動揺し、さらに最後のページには嵯峨が五十子殺害の当日逃亡したことが日岡の手で書き加えられていた。弱みを握られた嵯峨は日岡を手元に置こうと本部勤務を命じるが、日岡は呉原東署での勤務継続を申し出る。

日岡が大上の墓参りをしていると、薬局の桃子が現れる。桃子は大上の美人局を手伝っており、さらに日岡を慰めるために大上が引き合わせていたことを知る。日岡は全て吹っ切れたように笑うと、タバコを咥える。その手にはハイライトと、大上の形見である狼のジッポーが握られていた。

孤狼の血 スタッフ

原作:柚月裕子『孤狼の血』(角川文庫刊)
監督:白石和彌
脚本:池上純哉
音楽:安川午朗
製作:村松秀信,木下直哉,堀内大示,新井重人,丸橋哲彦,吉崎圭一,宮崎伸夫,大村英治,吉村和文,丸山伸一,瀬井哲也,間宮登良松,荒波修,渡辺勝也,長谷幸範
企画プロデュース:紀伊宗之
プロデューサー:天野和人
撮影:灰原隆裕
美術:今村力
キャスティングプロデューサー:福岡康裕
照明:川井稔
録音:浦田和治
編集:加藤ひとみ
スクリプター:長坂由起子
装飾:京極友良
ヘアメイクデザイン:勇見勝彦
衣装:森口誠治
音響効果:柴崎憲治
助監督:山本亮
製作担当:前芝啓介
ガンエフェクト:納富貴久男
特殊メイクデザイン・特殊造形:藤原カクセイ
スタントコーディネーター:吉田浩之
VFXスーパーバイザー:小坂一順
音楽プロデューサー:津島玄一
宣伝プロデューサー:杉田薫
アドバタイジング:高橋由佳
ラインプロデューサー:吉崎秀一
製作統括:木次谷良助
宣伝協力:「スナックdeカラオケnavi」実行委員会
企画協力:KADOKAWA
配給:東映
製作プロダクション:東映東京撮影所
製作:「孤狼の血」製作委員会(東映,木下グループ,KADOKAWA,日活,山陽鋼業,電通,朝日新聞社,WOWOW,ダイバーシティメディア,報知新聞社,VAP,東映ビデオ,GYAO,トーハン,プルーク)

孤狼の血 キャスト

警察
呉原東署
大上章吾:役所広司 – 刑事二課・暴力班捜査係主任(巡査部長)。捜査のためなら違法行為も厭わないが、尾谷組や裏社会に生きる人間からは慕われている。14年前の抗争で五十子会の幹部を殺害した疑惑がある。
日岡秀一:松坂桃李 – 刑事二課・暴力班捜査係・大上班のメンバー(巡査)。県警本部から呉原東署に配属された新人。広島大卒。実は大上の違法捜査を内偵するために送り込まれた県警の監察官。
友竹啓二:矢島健一 – 刑事二課・暴力班捜査係係長(警部補)。大上の型破りな捜査に理解を示している。
土井秀雄:田口トモロヲ – 刑事二課・暴力班捜査係主任(巡査部長)。尾谷組の捜査を仕切っており、加古村組に情報提供者を持つ。尾谷組に肩入れする大上とは犬猿の仲。
菊地:さいねい龍二 – 刑事二課・暴力班捜査係(巡査)。大上班。
有原:沖原一生 – 刑事二課・暴力班捜査係(巡査)。大上班。
毛利克志:瀧川英次 – 署長(警視正)。物証が無いために加古村組への強制捜査を渋る。
広島県警
嵯峨大輔:滝藤賢一 – 監察官(警視)。日岡を大上の内偵として送り込む。
岩本恒夫:井上肇 – 副本部長(警視長)。


広島仁正会
五十子会
五十子正平:石橋蓮司 – 会長。尾谷組に抗争を仕掛け、14年以上に渡って対立している。闇金「ホワイト信金」を経営している。
吉原圭輔:中山峻 – 幹部。抗争に乗り出した尾谷組の永川恭二に撃たれる。
金村安則:黒石高大 – 元幹部。14年前、尾谷組との抗争で賽本友保を殺害した直後に死亡。その死には大上が関与しているとされる。
加古村組
加古村猛:嶋田久作 – 組長。
野崎康介:竹野内豊 – 若頭。上早稲二郎をリンチする。
吉田滋:音尾琢真 – 構成員。尾谷組の柳田タカシを殺害する。その翌日に大上によって拷問を受け、上早稲に対するリンチを自白する。
苗代広行:勝矢 – 構成員。元力士で通称関取。大上、日岡と接触した直後、行方不明になる。
島津健太郎 – 構成員。
西川雄大 – 構成員。


全日本祖国救済同盟
瀧井銀次:ピエール瀧 – 代表。浮気癖がある。大上とは旧知の仲で、広島仁正会傘下でありながら情報提供をする。
瀧井洋子:町田マリー – 瀧井銀次の妻。浮気癖のある夫に激怒しヒステリックを起こし、猟銃を乱射する。

呉原金融
上早稲二郎:駿河太郎 – 経理係。加古村組の組員たちに多額の金銭を要求され、呉原金融の本店である「ホワイト信金」の金に手を出す。そのことが問題になったため野崎康介らに拉致されリンチを受ける。その後失踪。

尾谷組
尾谷憲次:伊吹吾郎 – 組長。14年前の抗争で逮捕される。現在は鳥取刑務所に収監されている。
一ノ瀬守孝:江口洋介 – 若頭。尾谷の代わりに組を仕切っている。
備前芳樹:野中隆光 – 構成員。タカシの仇討ちをしようとした際、事情を知らない日岡により逮捕される。
永川恭二:中村倫也 – 構成員。血の気が多い。加古村組組員を半殺しにする。抗争が勃発すると、五十子会幹部を襲撃する。
柳田タカシ:田中偉登 – 構成員。クラブ梨子のママと付き合っている。加古村組・吉田を襲撃し、返り討ちにされる。
藤岡達也:木原真之介 – 構成員
賽本友保:ウダタカキ – 元幹部。14年前、五十子会との抗争で金村安則に刺されて死亡。


その他一般人
高木里佳子:真木よう子 – 広島の裏社会の社交場「クラブ梨子」のママ。
岡田桃子:阿部純子 – 薬剤師。苗代に半殺しにされた日岡を手当して以来、親しい仲になる。
高坂隆文:中村獅童 – 安芸新聞社の記者。大上に関して嗅ぎ回る。
上早稲潤子:MEGUMI – 上早稲二郎の妹。兄の行方を知るため、呉原東署に訪れる。
善田新輔:九十九一 – 養豚業者。
善田大輝:岩永ジョーイ – 善田新輔の息子。薬物を使用しており、大上に連行され拷問を受ける。
高木友希:込江海翔 – 高木里佳子(ママ)の息子。反抗期。
菅原健
深華 – クラブ梨子ホステス
竹内恵美 – クラブ梨子ホステス
横山雄二(中国放送アナウンサー)
泉水はる佳(当時中国放送アナウンサー) – 昭和63年冬季第32回やっちゃれ会大総会の司会
竜のり子 – たばこ屋店主。大上に「狼のジッポー」を売る。
範田紗々 – 風俗嬢。
小豆畑雅一 – 大昌旅館支配人。同旅館には広島仁正会の息がかかっている。協力を拒否したために大上によって旅館に放火され、防犯カメラのテープを盗まれる。
二又一成 – ナレーション

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